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【vol.10】相続Q&A~100万円以下の連年贈与は贈与税はかからない?~

父は、相続対策として、子を契約者とした保険に加入し、毎年その保険料相当を子に現金で贈与したいと考えています。しかし、税金に詳しい知り合いにそのことを相談すると「何年にもわたって毎年同じ金額を贈与(連年贈与)すると、将来、贈与初年度に遡ってその総額を一の贈与だったとして課税される」との指摘を受けました。年間の保険料は100万円にも満たないので、毎年の贈与金額は基礎控除額以下のため贈与税はかからないはずですが、これは一体どういうことでしょうか?

回答

連年贈与は相続税の負担を減らすために有効な方法ではありますが、毎年決まった時期に同額を贈与することは、1年ごとの贈与としてではなく、連年贈与の初年度において定期金に関する権利の贈与を受けたものとして、税務当局に認定される可能性を孕んでいます。

解説

連年贈与について、このような課税の取扱いをすることは、条文や通達で直接規定されている訳ではなく、国税庁で発表しているタックスアンサーにおいて、同様のケースについての以下のような見解が示されていることに由来します。

 

国税庁 タックスアンサーより

No.4402 贈与税がかかる場合

Q 親から毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与を受ける場合には、各年の受贈額が110万円の基礎控除額以下ですので、贈与税がかからないことになりますか。

A 各年の受贈額が110万円の基礎控除額以下である場合には、贈与税がかかりませんので申告は必要ありません。ただし、10年間にわたって毎年100万円ずつ贈与を受けることが、贈与者との間で約束されている場合には、1年ごとに贈与を受けると考えるのではなく、約束をした年に、定期金に関する権利(10年間にわたり毎年100万円ずつの給付を受ける権利)の贈与を受けたものとして贈与税がかかりますので申告が必要です。
このタックスアンサーの見解によった場合には、本件贈与は相続税法第24条の有期定期金の評価(以下参照)によることとなり、①~③の評価方法のうち、③の方法によって評価額を計算することになります。
100万円×9.945(予定利率0.1%の10年の複利年金現価率)=994,5万円

 

相続税法第24条 抜粋(平成22年改正)
1.有期定期金:次の①~③のいずれか多い金額
①解約返戻金の金額
②定期金に代えて一時金の給付を受けることができる場合には、当該一時金の金額
③一年間に受けるべき金額×残存期間に応ずる予定利率の複利年金現価率※

※複利年金現価率とは、毎期末に一定金額を一定期間受け取れる年金の現在価値を求める際に用いられる率をいいます。
なお、上記に伴う贈与税の計算(現行法)は以下の通りです。
(994,5万円 -110万円※)×40%- 125万円=228,6万円
※引いた金額から千円未満は切捨て

 

教訓

連年贈与を行うことがすなわち有期定期金の贈与ということはありませんが、将来、税務当局にあらぬ疑いをかけられないためにも、連年贈与を行うにあたっては、次のことを心がけておくとよいでしょう。

1.贈与の都度、贈与契約書を作成する。
(「10年間毎年~」といった内容の契約書で済ませようとすると、それこそ有期定期金になってしまいます。)

2.贈与契約書には、贈与者と受贈者が直筆で署名する。
(双方が同意した上での契約に基づく法的に有効な贈与であることを証明します。)

3.年間の贈与金額を基礎控除額の110万円を少し超えるようにして、贈与税の申告と納付を行う。
(年間120万円の贈与なら、贈与税は1万円です。)

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