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【vol.14】『笑顔になるか否か』相続財産の分割方法の選択

この度パートナー事務所としてお手伝いさせていただく千代田総合税理士事務所税理士の下谷博です。よろしくお願いいたします。

私が最近携わらせていただいた家族の遺産分割のお話をさせていただきます。
「相続税」のほかに「譲渡所得税」が登場し、少々複雑ですが現実的事例としてお読みいただければ幸いです。

相続が発生時、故人が遺言書を作成していなければ、相続人全員で遺産分割協議をすることになります。相続財産の分割は通常、相続財産そのものを相続人で分割する現物分割により行われます。相続財産が預貯金などの分割しやすい財産のみであれば問題はありませんが、相続財産が主に居住用不動産一か所のみである場合など、現実には相続財産を現物での分割が難しい場合があります。この場合の代替方法として、『代償分割』と『換価分割』があります。

≪事例≫

母親が死亡し、遺されたのは同居していた長男と結婚して地方に嫁いだ長女と次女の三人(父親は既に他界)遺産は自宅不動産(土地及び建物;時価評価金額5,000万円)が主で、預貯金はあまりありません。長男は自宅を売却しマンションを購入する予定です。
兄弟間では、遺産の評価額を元に長男が1/2、長女・次女がそれぞれ1/4ずつ取得することで話はまとまりました。なお、遺産は相続税の基礎控除額8,000万円以内に収まるので相続税の申告や納税の必要はありませんでした。

 

さて、ここで選択肢が発生します。(A)「換価分割」・(B)「代償分割」の二択です。
どちらの選択に『笑顔』が待っているか、ご一緒にお考えください。

 

(A) 不動産を売却し金銭で分ける≪換価分割≫
遺産分割協議書で「長男が便宜上単独で相続登記をした上で売却し、その売却益をそれぞれ按分する。」という取り決めをします。
不動産を5000万円で売却できたとして(諸経費2000万円を差し引く)、長男は1500万円
長女、次女はそれぞれ750万円の分配を受けることになります。
ここで、不動産売却に伴い「売却益」が生じる場合「譲渡所得税」の課税の問題が生じ相続人はそれぞれ申告をしなければなりません。

 
それぞれの譲渡益は以下のようになります。

長男        (5000万円-2000万円)×2/4=1500万円
長女・次女一人当たり(5000万円-2000万円)×1/4=750万円

 

母親と同居していた長男は3000万円の特別控除が受けられますので、長男の譲渡益(1500万円)は特別控除の範囲内として譲渡所得税は発生しません。
一方、長女・次女は結婚し実家を離れていますので居住用財産として適用を受けられず原則通り譲渡益750万円に対し20%の長期譲渡所得税の税金を払わなければなりません。
一人当たり(750万円×20%)=150万円 となります。

 

(B)長男が単独で不動産を相続した上で売却し売却代金から代償金を支払う≪代償分割≫
遺産分割協議書で「長男は自宅を単独で相続する。その代償として長女・次女に対し各750万円を支払う。」という取り決めを行います。
長男はこの分割協議書に基づき長男名義の登記をした上で売却します。
売却に伴い発生する譲渡益は3000万円ですが、前述の通り以前から居住していた長男は居住用財産の特別控除が適用されるため、譲渡所得税の支払いはありません。
(長女・次女は不動産を形式的にも実質的にも相続により取得していないので譲渡所得税の申告義務は発生しません。)
長男は売却後長女・次女に対し各750万円の代償金を支払い遺産の分配作業は完了です。

 

 

換価分割も代償分割も相続し売却益を按分することに変りはありませんが、今回は選択肢Bの代償分割に軍配が上がりました。つまりこの様にケースバイケースで手順や分割方法により大きな違いが出てきます。その選択は遺された家族に『笑顔相続』をもたらすことができるか、それを見極めるのが私たち税理士の本分と心得て相続診断協会パートナー事務所としてお役にたてるよう努めて参ります。

 

 

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